自分へのダメ出し退治月間
皆さんは、誰かにダメ出しすることってありますか?
仕事や家庭などで、
部下やあるいは子供やパートナーにダメ出しするような場面があるよ、
という人もきっといるのではないかと思うのですが、どうでしょう?
人によってさまざまな状況があるかと思いますが、大抵の人に共通して、ダントツにダメ出しをする相手がいます。
それは「自分自身」です。
私たちは本当に、誰よりも自分自身に対して、厳しいダメ出しをしがちです。
私も長い間、キリのないダメ出しを自分にしてきました。
色々なことに手を出して、複数の仕事も経験してきましたが、何かができる様になっても、意識はすぐ次の到達目標みたいなものに飛んでいきます。結果、何を手に入れても、心の満足というものにはほど遠い状態でした。
そんな私を見て、恒美(ひさみ)さんが話をしてくれました。
「ともこさんは向上心があって、いつでも人一倍、努力して頑張っているよね。
まずそれを今のともこさんはちゃんと認識している? 」
ん? 努力して頑張っている今の自分?
うーん……
それを自分でちゃんと認識しているかと改めて言われて、よくよく自分を見つめてみると、
確かに、頑張って努力している今の自分を見るというよりも、
思ったような目標に達成していない自分の方ばかりを気にしていることに気づきました。
「心の満足を感じられないのは、
意識のフォーカスが今のともこさんをみてないからだよ。
今の意識はいつも、少し先のともこさんをみてるでしょ。少し先ぐらいならいいけど、だいぶ先のこうあってほしい未来の完成形のともこさんをみていたら、落ち込みも、ダメ出しも最強レベルになっちゃうよ」
う……確かに……
「目標の自分=こうあってほしい未来の自分」ですよね。
そう、私は、今の自分を見て認めることよりも、
目標の自分との差ばかりを見て気にしていたのですね。
そうすると、いつまで経ってもどんなに努力しても、自分を認めることはできません。
いつも心のポインタは、未来へとズレていくのですから。
「向上心、努力、頑張り、この最強な3つのエネルギーがタグを組んで現実のともこさんを動かしているんだよ。その性質が習慣化して使われているってともこさんはめちゃくちゃラッキーな人。
このように、向上心があって果敢に挑戦する行動力があっても、意識が少し先に行って、いつも未来のこうであってほしい自分と繋がっている人がいるの。
そういう場合、ただ向上していけば、前に進んで果敢に挑戦していれば、
それで未来の自分は絶対幸せになると思ってる。
でも、そうじゃないんだよ。
なぜならこの時、今の自分を見ていないの。
未来の『こうあってほしい』完成形の自分に意識を置いているから、必ずダメ出しをする。
いつも意識は、今の自分じゃないところに出かけちゃってる。
これだといつまで経っても満たされることはないよね。
こうあってほしい未来の自分も、未来のその時になってみると、結局今の自分なんだよ。
だからね、『向上心を持っている今の自分』を認めていくことなの。
今の自分を認めて、今の自分と繋がって、今の自分を満たすことが、ブレない心を作っていくことにもなるんだよ」
そうだ、本当だ……
どんなに頑張っても、このまま自分にダメ出しし続けて認めないままでいたら、
どこまで行ってもいつまで経っても、満足しないし安心もできないですよね。
フランスの小説家・劇作家・哲学者であるアルベール•カミュの有名な小説に「シーシュポスの神話」というものがあります。
神々の怒りを買ったシーシュポスは大きな岩を山頂に押して運ぶという罰を受けるのですが、
山頂に運び終えた途端にその岩は転がり落ちてしまい、何度運んでも、結局同じ結果になってしまう。ここで描かれているシーシュポスの姿は、どんなに頑張ってもいつまでたっても自分を認めないこの意識のようです。
そうだね、恒美さん、
もう今の自分にダメ出しするのをやめて、自分を認めていかないと……
「じゃあさ、ともこさん、今から1ヶ月間、自分にダメ出ししない月間を作ろう~」
恒美さんが提案してくれます。
え? ダメ出ししない月間?
しかも1ヶ月?
「うん、1ヶ月。
期間を決めないと、今の意識がすぐブレブレになってダメ出しエネルギーに同調しちゃうから」
なるほど、言われてみると、
とりあえず1ヶ月、と決めた方が取り組みやすい。
それにこの方が、期間を決めず漫然と取り組むより、やる気が続きそうです。
「ダメ出しエネルギーは、ごもっともにように容赦なく、自分に足りていないことや出来ていないこと、欠けていることを指摘してくる。
でもこの機関銃のように強い指摘も、1ヶ月だけなら頑張れるでしょう?
その1ヶ月だけ頑張ってみると、手応えがわかってくるから、次の1ヶ月が楽になるの。
それを繰り返すといつの間にか、
『満ちている今の自分』が、今の主役になっていく。そしてこのダメ出しエネルギーは、どんどん薄れてくるよ」
うわぁ~……満ちた感覚で生きていきたい!
それは私にとって、どうしてもそうなりたいと渇望していたことでした。
わかった!恒美さん、やってみるね。
こうして恒美さんに伝えてもらって、私が実際に「絶対に自分にダメ出ししない月間」
を設定してやってみたのは、もう何年か前のことです。
「まずは自分のダメ出し」という根強かった思考の癖は、今ではすっかり無くなっています。
そして、この思考の癖が無くなっていくことと比例して、心の満足感やどっしりとした落ち着きみたいなものが手に入ったような気がします。
ついつい自分に厳しいダメ出しをしてしまう、という人は、もしかしたらかつての私のように、心が満たされることがあまりなく、
いつも何かを求めて、落ち着いていられないかもしれません。
もし思い当たることがある、という人がいたら、まずは「自分へのダメ出し退治月間」で今の自分を主役に戻してあげてください。
一ヶ月って結構長いけど、この「光の努力」って必ず報われますから、
ぜひ、トライしてみてくださいね。